記事監修:院長 松島幸恵

「磁気で脳を刺激すると聞くと、少し怖い」「薬とどう違うのだろう」。rTMSについて、そんな疑問を持つ方もいらっしゃると思います。今回は治療の原理を、米国国立精神衛生研究所(NIMH)の解説をもとに紹介します。[1]
頭の外から、磁場を使って神経に働きかけます
rTMSは「反復経頭蓋磁気刺激」の略です。頭に当てたコイルに電流を流すと、短い時間で変化する磁場が生まれます。その磁場によって脳内に弱い電流が誘導され、神経細胞や神経回路に刺激が伝わります。頭を切開したり、脳内に電極を埋め込んだりする治療ではありません。[1]
コイルが磁場をつくる → 脳内に電流が誘導される → 神経細胞・神経回路に働きかける、という順序です。「磁石を当てておくだけ」の仕組みとは異なります。
うつ病では、どのあたりを刺激するのでしょうか
うつ病のrTMSでは、気分の調整や認知的なコントロールに関係する前頭前野などが刺激の対象になります。代表的には左側の前頭前野を狙いますが、部位や刺激の方法は治療法によって異なります。[1]
「うつ病は脳の一か所だけの故障」という意味ではありません。特定の部位を入口として神経回路の活動に働きかけ、症状の改善を目指す治療と考えると理解しやすいでしょう。どの部位を、どのように刺激するのが最適かについては、研究が続いています。[1]
なぜ「反復」するの?
rTMSでは短い刺激を繰り返し、通常は複数回の通院で治療を行います。NIMHは一般的な治療の例として、週5日、4~6週間を紹介しています。ただし、1回の時間や回数は刺激方法によって幅があり、この日程がすべての医療機関や患者さんに当てはまるわけではありません。[1] 実際の通院計画は、症状と使用する機器・治療方法に応じて確認します。
治療中は眠るの?痛みはあるの?
通常のrTMSは全身麻酔を必要とせず、意識のある状態で受けます。刺激の際に、頭を軽くたたかれるような感覚が生じることがあります。頭皮の不快感や痛み、顔やあごの筋肉の動き、頭痛、めまいなどが起こる場合もあります。けいれん発作はまれですが、リスクがゼロではありません。[1] 不快感があれば、我慢せず治療担当者に伝えてください。
薬が不安なとき、どう考えればよいでしょうか
rTMSは、薬物療法などで十分な改善が得られないうつ病で検討される選択肢の一つです。ただし、薬への不安があるだけで、すべての方に適した治療になるわけではありません。診断、これまでの治療、症状の程度を確認したうえで判断します。薬や心理療法と併用する場合もあり、現在の薬を自己判断で中止することは避けてください。[1]
「必ず治る」「健康な方の仕事能力を高める」といった効果を保証する説明とは分けて考える必要があります。効果や負担を含め、自分に合う治療かどうかを主治医と相談しましょう。
当院の診療に関する費用・通院・副作用の説明は、rTMSの仕組み・適応、副作用・注意点、初回相談の案内をご覧ください。この記事で紹介した一般的な仕組み・治療例と、当院で実施する治療の条件は区別してご確認ください。
参考資料
[1] 米国国立精神衛生研究所(NIMH)Brain Stimulation Therapies(rTMSの項、2024年3月レビュー、2026年9月22日確認)。米国の公的資料に基づく一般的な解説であり、日本国内の承認範囲や保険適用を示すものではありません。個別の適応・治療方針は診察で判断します。