オリーブ通信|心と体のコラム 第5回
「締め切り直前まで取りかかれない」「大切な物を何度もなくす」「会議を聞きながらメモを取るのが難しい」。失敗が重なると、自分の努力不足だと感じるかもしれません。困りごとを整理することは、自分を責めることとは違います。ADHDの可能性も含め、支援の方法を考えられます。
大人になって初めて気づくことがあります
ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意、多動性・衝動性の特徴が続き、家庭や学校、職場など複数の場面で生活に支障をきたす発達の障害です。大人では、じっとしていられない様子よりも、予定の管理、優先順位づけ、作業を最後まで終えることの難しさが目立つことがあります。[1]
診断を受けるのが大人になってからでも、評価では子どもの頃からの様子を確認します。周囲の支援や得意なことで補えていた困りごとが、仕事や家事の要求が増えた時期に目立つこともあります。「学生時代は何とかできた」ことだけで否定はできません。[1]
「集中できない」原因は一つではありません
睡眠不足、うつ状態、不安、体の病気や薬の影響でも、集中や記憶に関する困りごとが起きます。最近急に始まったのか、以前から複数の場面で続いていたのかを確かめることが大切です。ADHDとほかの病気が重なる場合もあります。[1,2]
SNSの体験談やチェックリストが自分に当てはまっても、それだけで診断はできません。心理検査の点数一つで決まるものでもありません。診察では、発達歴、現在の症状、生活への影響、ほかの原因をまとめて評価します。
受診前に整理すると役立つこと
- 困る場面と頻度。「忘れ物が多い」なら、何をどこで忘れるか
- 子どもの頃の様子。通知表や家族の話など、無理なく用意できる情報
- 仕事だけでなく、家事、約束、お金や持ち物の管理で困ること
- 睡眠、気分の変化、飲酒、服薬状況
古い資料が見つからなくても、それだけで相談をあきらめる必要はありません。記憶していること、分からないことを分けてお話しください。
努力を増やすより、仕組みを変える
治療や支援には、薬物療法、心理的な支援、生活・職場の工夫などがあります。薬の適応と選択は、診断や体の状態に応じて個別に判断します。薬が助けになる場合もありますが、すべての困りごとを薬だけで解決するわけではありません。[1]
実践例として、予定を一つのカレンダーにまとめる、口頭の指示を短いメモで確認する、大きな作業を「資料を開く」など小さな行動に分ける、持ち物の置き場所を決める方法があります。これは診断の有無にかかわらず試せる工夫です。合わない方法を続ける必要はなく、一つずつ効果を振り返ります。
職場への相談も、まず「何が難しく、どんな条件なら進めやすいか」を具体的にすると整理しやすくなります。診断名を誰にどこまで伝えるかは、自分の希望や職場の状況を踏まえて考えましょう。
目標は、得意なことも生かして暮らしやすくすること
受診は、自分にラベルを貼るためだけのものではありません。苦手な作業にどれだけ負担がかかっているかを理解し、助けになる方法を見つける機会です。困りごととともに、うまくできていることや大切にしたい生活も教えてください。
ご相談をご希望の方へ
池袋オリーブメンタルクリニックでは、症状だけでなく、生活で困っていることや治療への希望もお伺いします。初めて受診される方へ/通院中・再診の方へ。受診前のWEB問診は、可能な範囲でご記入ください。
この記事は一般的な医療情報です。診断や治療の判断は、個別の診察に基づいて行います。資料確認日:2026年9月28日。
