記事監修:院長 松島幸恵
オリーブ通信|rTMSを知る 第4回
当院では、うつ病へのrTMSの研究報告を踏まえ、治療の選択肢の一つとして導入しています。今の治療でつらさが残る方も、集中しづらさを含めたお困りごとをご相談ください。
文章を読んでも頭に入らない、会議の内容を覚えにくい、簡単な判断に時間がかかる。うつ病では気分の落ち込みだけでなく、集中や記憶、考えをまとめることにも困難が生じることがあります。「以前はできたのに」と、自分の能力を責めてしまう方もいます。
集中しづらさも、治療を相談する大切なきっかけです
認知機能とは、注意を向ける、覚える、判断する、段取りを考えるなどの働きです。うつ病ではこれらに影響が出ることがあり、睡眠不足や疲労、不安、薬の作用なども重なる場合があります。[1] 集中できないことだけで、うつ病や認知症と決めつけることはできません。
診察では「仕事のミスが増えた」「買い物の順序が決まらない」といった具体例を伝えると役立ちます。いつから始まったか、気分や睡眠との関係、服薬の変更なども確認します。急に強い混乱が生じた、言葉が出ない、体の片側が動かしにくい場合などは、精神科の予約を待たず緊急の対応が必要です。
うつ病の改善を目指す、rTMSという選択肢
rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)は、頭の外側から磁気刺激を与え、うつ症状の改善を目指す治療です。当院では、うつ病への研究報告を踏まえて導入しています。薬による治療を続けても改善が十分でない、薬の副作用で困っている、ほかの治療の選択肢を知りたいといった場合に、症状・治療歴・安全性を確認しながら検討します。
大切なのは、集中しづらさだけを切り離すのではなく、気分や睡眠、生活への影響も含めて治療を考えることです。今の治療でつらさが残っている方も、ご自身に合う選択肢があるか、診察でご相談ください。
集中力への効果は、うつ症状への効果と分けて考えます
うつ病への治療効果と、集中力や記憶力を直接高める効果は、分けて評価する必要があります。2025年に公表された系統的レビュー・メタ解析では、うつ病患者さんを対象とした15件の研究を統合し、認知機能の各領域について実刺激が偽刺激を有意に上回る改善は確認されませんでした。[2]
これは認知機能への効果を調べた結果であり、うつ症状に対するrTMSの治療効果そのものを否定する結論ではありません。集中力の向上を約束することはできませんが、集中しづらさを含む日常の困りごとは、治療方針を考えるうえで大切な相談内容です。研究の対象や刺激条件はさまざまで、一般的な研究結果は当院の個別の治療成績を示すものではありません。
目指したい日常を、診察で共有しましょう
「短い文章を読めるようになりたい」「一つの用事を終えられるようになりたい」など、今困っていることや取り戻したい日常をお聞かせください。気分や睡眠のほか、生活の負担、服薬の影響などを確認しながら、rTMSを含む治療の選択肢を検討します。
経過を見るときには、検査の点数だけでなく、日常の小さな変化も参考になります。生活での実感と検査結果が一致しないこともあるため、両方を診察で共有します。rTMSは診断と適応に基づく治療であり、健康な方の仕事や学習の能力向上を目的とするものではありません。
回復中の生活を支える工夫
一度にする作業を減らす、口頭の依頼をメモに残す、短い休憩を入れるなど、負担を小さくする工夫も大切です。調子が少し良くなった直後に、以前と同じ量の仕事を一気に戻す必要はありません。
気分が改善しても認知面の困りごとが残る場合は、睡眠、薬、身体の状態、仕事の負荷などを改めて確認します。rTMSを含む治療と生活の調整を組み合わせながら、ご自身の状態に合った回復の進め方を考えていきましょう。薬は自己判断で中止・減量せず、主治医にご相談ください。
まずは、ご自身に合う治療か相談してみませんか
「今の治療だけではつらさが残る」「rTMSが自分に合うか知りたい」。その段階からご相談いただけます。他院に通院中の方も相談可能です。紹介状があればお持ちください。紹介状がなくても相談できます。相談したからといって、治療を始める必要はありません。
お問い合わせでは「rTMSの相談希望」と、ご希望の曜日・時間帯をお知らせください。詳しい症状や治療歴は診察で伺います。フォームの送信だけでは予約は確定しません。
当院の治療内容・費用と確認事項
当院のrTMSは自由診療(保険適用外)です。頭部に当てたコイルから磁気刺激を与え、うつ症状の改善を目指します。週2〜4回通院し、1回の刺激時間は6分、20回を目安に効果や経過を評価します。準備・診察・会計の時間は別途必要です。20回で必ず改善・終了するという意味ではなく、その後の継続や回数は状態に応じて医師と相談します。
治療料金は1回7,150円、10回69,300円、20回137,500円、30回198,000円(税込)です。治療料金以外に必要なのは初回の診察料のみです。初診は保険診療で、3割負担の場合2,500円程度ですが、自己負担割合や診療内容によって異なります。初診の保険診療と、rTMS治療の自由診療は区別されます。
効果には個人差があります。頭痛、刺激部位の痛みや不快感、顔の筋肉の収縮、めまいなどが起こり、まれにけいれん発作や躁状態が生じることがあります。体内の金属・医療機器、けいれんの既往、服用中の薬などを確認し、医師が適応と安全性を判断します。
使用機器は、国内の医療機器販売業者から購入したMagPro R30(販売名:磁気刺激装置 マグプロ システム、認証番号:224AIBZX00013000)とCool-B70コイルです。国内の認証目的は生体の誘発反応検査であり、当院でのうつ病治療は認証目的外の使用です。国内には、一定の条件を満たす成人のうつ病に対して承認された別の機器「NeuroStar TMS治療装置」があります。
海外製造元の安全性情報では、頭皮の痛み、頭痛、刺激部位の灼熱感、まれなけいれん発作などが報告されています。頭部や刺激コイル付近の取り外せない金属・植込み機器の種類によっては治療を受けられません。詳しくは使用機器・入手経路・安全性の説明をご確認ください。
一般的な医療情報であり、個別の診断や治療を指示するものではありません。研究結果は当院の治療成績を示すものではありません。本文・院内案内の確認日:2026年10月18日。

